ノースロンドンダービーとは?アーセナル対トッテナムの歴史と見どころ
アーセナルを追いかけていると、必ず年に2回、ファンの空気が明らかに変わる日があります。それがノースロンドンダービー(NLD)、トッテナム・ホットスパーとの一戦です。この記事では「なぜこの2クラブなのか」を、歴史と地理からていねいに説明します。
そもそも「ダービー」とは何か
サッカーでいうダービーとは、同じ街や近隣地域に本拠地を置くクラブ同士の対戦を指します。ファンの生活圏が重なるぶん、職場や学校、家族の中にも両クラブの支持者がいる。順位や優勝争いとは別の次元で「負けられない」試合になるのは、そのためです。
イングランドにはマンチェスター、マージーサイド(リヴァプール)など有名なダービーがいくつもありますが、ロンドン北部のそれがノースロンドンダービーです。
始まりは1913年の「引っ越し」
意外に思われるかもしれませんが、アーセナルとトッテナムはもともとご近所ではありませんでした。
アーセナルは1886年、ロンドン南東部のウーリッジで、王立造兵廠(兵器工場)の職工たちによって生まれたクラブです。当時、北ロンドンのトッテナムとは何の関係もありませんでした。
ところが1913年、アーセナルは街を横断してロンドン北部のハイバリーへ本拠地を移します。すでに北ロンドンに根を張っていたトッテナムからすれば、自分たちの縄張りに突然引っ越してきた格好です。ここからライバル関係が始まりました。
決定的だった1919年の「昇格投票」
因縁を決定的にしたのが、第一次世界大戦後の1919年です。
中断していたフットボールリーグが再開するにあたり、リーグ全体は40チームから44チームへ拡大され、2つのディビジョンに22チームずつ振り分けられることになりました。つまり1部に空席が生まれたわけです。
この最後の1枠は、各クラブの投票で決められました。アーセナルは中断前の1914-15シーズンを2部で終えており、自動昇格の位置ではありません(この年の順位は資料によって5位とも6位とも記録されており、ここでは断定しません)。一方トッテナムは降格対象で、他クラブに残留を訴えていました。
結果は、アーセナルが18票を獲得。2位のトッテナムは8票、バーンズリーが5票で、アーセナルが1部の椅子を手にします。このとき先頭に立って動いたのが、1910年にクラブを破産寸前から救い、1913年に北ロンドンへ移した会長ヘンリー・ノリスでした。
順位でも成績でもなく「投票」で立場が入れ替わった——この記憶が、100年以上経った今もダービーの温度を上げ続けています。
記憶に残る名勝負(2022年より前)
- 2001年11月/アウェーで1-1の引き分け スパーズから移籍してきたソル・キャンベルが、古巣のホーム・ホワイトハートレーンで敵意にさらされながらプレー。ヴェンゲル監督は「並外れた強さ」と称えました。
- 2002年11月/ホームで3-0の勝利 ティエリ・アンリが自陣から持ち込んで決めた独走ゴール。この場面は現在、エミレーツ・スタジアム外の銅像になっています。
- 2004年4月/アウェーで2-2の引き分け 無敗優勝を続けるアーセナルが、よりによってライバルの本拠地でリーグ優勝を決めた一戦。ロビー・キーンの終盤PKで勝利こそ逃しましたが、敵地での戴冠はダービー史に残りました。
- 2004年11月/アウェーで5-4の勝利 9ゴールを9人の異なる選手が決めるという、屈指の乱打戦でした。
- 2008年10月/アウェーで4-4の引き分け デイヴィッド・ベントリーの40ヤード弾で幕を開け、最後まで決着がつかなかった激闘。
ちなみに、ハイバリーでの最後の公式戦(2006年5月7日)でウィガン・アスレティックに4-2で勝利したときも、アーセナルはトッテナムを抜いてチャンピオンズリーグ出場権を手にしています。
なお2022年9月時点でNLD史上最多得点者とされていたのは、当時トッテナムに在籍していたハリー・ケイン(17試合13ゴール)でした。これは当時の報道時点の数字で、その後の記録は更新されている可能性があります。最新の集計は公式サイト等でご確認ください。
2022-23シーズン以降のNLD
ここからは、直近のリーグ戦での対戦をまとめます。
| 日付 | 会場 | 結果 |
|---|---|---|
| 2022年10月1日 | ホーム | 3-1でアーセナルが勝利 |
| 2023年1月15日 | アウェー | 2-0でアーセナルが勝利 |
| 2023年9月24日 | ホーム | 2-2で引き分け |
| 2024年4月28日 | アウェー | 3-2でアーセナルが勝利 |
| 2024年9月15日 | アウェー | 1-0でアーセナルが勝利 |
| 2025年1月15日 | ホーム | 2-1でアーセナルが勝利 |
| 2025年11月23日 | ホーム | 4-1でアーセナルが勝利 |
| 2026年2月22日 | アウェー | 4-1でアーセナルが勝利 |
とくに印象的なのが優勝シーズンとなった2025-26の2試合です。11月23日のホームゲームではエベレチ・エゼがハットトリック(1試合3得点)を達成し、4-1で勝利。NLDでハットトリックを記録したのは史上4人目でした。年が明けた2026年2月22日のアウェーでも、エゼの2得点とヴィクトル・ヨケレスの2得点で4-1と勝ち切っています。
また2025年7月のアジアツアーでは、香港で英国外で初めてNLDが開催されました。観衆は49,975人。この親善試合はアーセナルが0-1で敗れています。
2026-27シーズンのNLDは、2026年9月21日時点でまだ行われていません。
観るときに押さえておきたいポイント
年2回、ホームとアウェーで1試合ずつ。 プレミアリーグは20クラブが各チームと2回ずつ、計38試合を戦うリーグです。NLDもこの日程の中に組み込まれるため、開催は年2回が基本になります(カップ戦で当たれば増えます)。
会場で雰囲気が変わる。 ホームのエミレーツ・スタジアムと、アウェーのトッテナム・ホットスパー・スタジアム。いずれも6万人規模のスタジアムで、テレビ中継でも音の違いがはっきり伝わります(収容人数は2026年9月時点の各クラブ公式サイトの公表値にもとづきます。最新の数字は公式サイトでご確認ください)。
順位表への影響が大きい。 上位で競り合っているシーズンほど、勝ち点3の価値が跳ね上がります。「ダービーだから特別」だけでなく、優勝争い・CL出場権争いの直接対決になることも少なくありません。
カードが荒れやすい。 球際が激しくなり、警告の数が増えがちです。VAR(ビデオ・アシスタント・レフェリー)の介入が試合の流れを変える場面も、ダービーではよく起こります。
初めてNLDを観る方は、ぜひキックオフの30分前から中継をつけてみてください。スタジアムが温まっていく過程そのものが、この試合の見どころのひとつです。
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参考
- https://www.arsenal.com/news/true-story-our-controversial-1919-promotion
- https://www.premierleague.com/en/news/4114942
- https://www.arsenal.com/history/arsenal-stadium-highbury
- https://www.arsenal.com/history/laying-the-foundations/laying-the-foundations-overview
- https://www.soccer-king.jp/news/world/eng/20220929/1693247.html

